SPELLとは

英国自閉症協会(National Autistic Society)にはSPELLという共通の理念があります。これはStructure(構造)、Positive (肯定的)、Empathy(共感)、Low Arousal(穏やか)、Links(繋がり)の五つのことでNASの支援のフレームワーク(大原則)です。NASは自閉症学校をはじめとして幼児から成人までを対象にした多くの支援機関を運営していますがNASの運営する支援機関すべてこのSPELLという共通の理念に基づいて運営されています。SPELLはASDにはASD特有の特性と支援ニーズがあるという認識から出発しています。

Stucture(構造) 予測可能であること(見通しがあること)、理解可能であること、安心できる環境であることが重視されます。構造化はASDの人の自立や自律を高めることにも役立ちます。例えば、あらかじめ予定をメモなどで視覚的に提示すれば、支援者が逐一指示する必要がなくなります。一般にASDの人は聴覚的理解より視覚的理解が優れていることや、順序についての関心が高いなどの長所を活用しています。TEACCHプログラムで重視される構造化と多くの共通点があります。

 Positive(肯定的に)支援は肯定的な雰囲気で注意深く行いましょう、無理なことを要求したり威圧的な態度は禁物です。誰でも興味のあること、やりたいという動機があることの方が取り組みやすいです。できないことより、できること、長所に焦点を当てます。周囲の人がASDの人を信頼して、受け入れて、敬意を持つ ことが大切で、子どもでも成人でも同様です。ASDの特性の一つは不安感を持ちやすいことであり、威圧的・強圧的な態態度を支援者がとるとASDの人は不安になったり本来持っている能力を発揮しづらくなります。肯定的な雰囲気で支援するためには、個別のアセスメントを慎重に行い、それぞれのASDの人にあった課題やプログラムを設定する必要があります。

Empathy(共感) ASDの人が環境をどのように認知しているかを理解しましょう。言い換えればASDの人の目を通して外界を理解すること、ASDの人の苦痛や楽しみに共感することが支援の基本です。定型の人ならば何の苦痛もなく受け入れられる予定の変更が非常な苦痛になりうることを、支援者が理解し、ASDの人の苦痛に共感し、本人が感じていることを否定しないことが大切です。

Low Arousal(穏やかな刺激) Aroudalというのは覚醒し、刺激された状態です。ASDの人は音や光、臭いなどの感覚刺激に過敏なことが多く、high arousalになりやすいです。どのような刺激が苦痛かは人によってまちまちですが、その人の苦痛になるような刺激は最小限にすべきです。注意するのはLow ArousalであることはNo Arousalであることを意味しないことです。ASDの人の経験の幅を広げるためには新しい刺激も必要なのは当然です。しかし、新たな課題やプログラムを行う際にはASDの人が混乱したり苦痛を感じたりしないように事前のアセスメントに基づいて計画的かつ柔軟に行うべきでしょう。

 Links(つながり)当事者、親、専門家が相互にオープンにコミュニケーションをとること,孤立ではなく社会とのつながりが必要です。ASDに関係した新たな知見やプログラムに関する情報は誰もが知ることができるようにすべきです。社会や専門家との情報・つながりを維持することで断片的な情報に基づいた不適切な支援方法を受ける可能性を減少することができます。

このようなSPELLアプローチはTEACCHの理念とも共通点が多いです。SPELLは知的障害のある自閉症の人にもアスペルガー症候群の人にも共通して適用されます。

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