特定領域に特化した支援?

発達障害の子どもに対して「特定領域に特化した支援」って、どうしてもイメージがわかない。というか、それが効果的とは思えない。こどもは環境の中で生きているし、支援者が特定の領域の専門家であっても、支援するときはジェネラリストであるべき。仮に「特定プログラム特化型」がありうるにしても、「総合支援型」のほうが高い専門性が求められる。一部分より全体を支援するほうが、アセスメントにしても支援方略にしても、より総合的な知識や技術が必要だから。

 それに特定プログラム特化型の指導者がOTやST,PTなどの国家資格保持者を想定しているなら、さらによくわからない。そのような資格をもち、さらに「障害児」の支援を自発や放デイのような場で指導できる人は実際にどれくらいいるだろうかとか、色々疑問がわいてくる。

 R4年の児童福祉法改正で法第43条に「児童発達支援センターは、(中略)高度の専門的な知識や技術を必要とする児童発達支援を提供し、あわせて障害児の家族、指定障害児通所支援事業その他の関係者に対し、相談、専門的な助言などの援助を行う」となっている。いろんな児童発達支援センターにコンサルとかで関与しているけど、児童発達支援センターの「高度の専門的な知識や技術」がどのように担保されるのか、そもそも「高度の専門的知識や技術」が何をさすのか、さらに疑問がわいてくる。

児童発達支援センターと児童発達支援事業について、必ずしも「センター」の方がいい療育をしているとは言えないように思う。

 自発や放デイで必要な最低限の「専門的な支援」は、常識を当てはめない、通俗心理学的な解釈をしないこと。例「呼んでも振り向かないは、反抗じゃない、聴覚の違い」、「偏食はしつけの問題でもわがままでもない、感覚過敏が関与しているかも」、てくらいの理解を支援者がしてくれればと思う。そこまで行ってないセンターもある。

 そもそも、自発管・サビ管研修では、そういった話題はまったくでなかった。

例えば、「幼児期から子どもどうしで遊んだり学んだりすることは生涯にわたり重要」なのはそのとおりだけど、それには、条件があって、ASDの子どもにとっても楽しい場面じゃなきゃいけない。一緒に楽しく遊ぶためには、ただ子ども集団に入れればいいわけではない。それには個別のアセスメントに基づいた障害特性に配慮した環境設定や大人の介入が必要。ただ、工夫なく子ども集団にいれると、子ども集団からはみ出したりして叱られたり孤立したり、無理に同調して疲れたりして、子どもにとってハッピーじゃないときもある。

実際に成人期のASDの人の幼少期の記憶をきくと、ネガティブな記憶が少なくない。彼らの時代には多くが「通常のクラス」で」「統合教育」を受けていたわけで、本来のインクルージョンには、子どもが苦労しないための工夫が必要。穏やかな雰囲気を心がける、話は短めにする、ジェスチャーを使う、無理強いはしないといったちょっとした工夫も障害特性を考慮した専門的な支援の一つ。

そういった意味の専門的な支援はなにも強度行動研修でやればいいってもんじゃなくて、普通の自発や放デイのスタッフにも必要で、自発管研修とかにも入れ込むべきだと思う。

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