完全母乳とカンガルーケア

最近、驚いたことは、ヤフーなんかでも紹介されていますけど、佐賀県で市長会があって、市長さん二人が、発達障害に対する差別的な発言があったと。
「発達障害は不幸である、市長としてそう思う。」と発言した市長さんがいました。
発達障害は不幸であるというのは勝手な思い込みですよね。なおかつ市長としてそう思うというのはますますおかしくて。個人としてそう印象を持ったのならそうかもしれないけど、なぜ市長としてそう思うのかよくわかりません。

さらに驚いたのは、その市長さんが出産直後にお母さんが子どもを抱く“カンガルーケア”と完全母乳の導入後から発達障害が増えたと、そういった産科の先生の資料を紹介したそうです。その方はその産科の先生の資料を信じているんでしょうね。カンガルーケアっていうのは生まれた直後から赤ちゃんを抱っこするような方法で、いろいろ議論はあるところですけど、カンガルーケアが発達障害の原因になっていると、そう思っていう専門家は世界中誰もいないと思います。

あと、完全母乳の導入後、カンガルーケアと完全母乳はよくないと、先生は主張されているようなんですが、そういってる先生はたぶん世界広しといえどもその先生くらいで、少なくともまともな論文でカンガルーケアとか完全母乳が発達障害の原因であると書いてある医学論文は僕自身読んだことはないです。もちろん全ての論文をよんだわけじゃないですから、そういうのはあるかもしれないですけど。少なくとも専門家の間で要因として議論されている中でカンガルーケアとか完全母乳というのはないです。

カンガルーケアとか完全母乳が発達障害に関係しているというのは非常に特殊な例外的な説だと思います。政治家が、なぜわざわざ特殊な説を引用するのかなと私は思います。もっと精密な方法論で原因を探っている論文はたくさんあるし、まともな議論している専門家はたくさんいるので、そういう「きちんとした専門家」の話をちゃんと聞いて欲しいです。もちろん、佐賀県にも発達障害の専門家もたくさんいらっしゃいます。市長会という公的な場で影響力のある発言ですし、市長は責任のある立場ですから、きちっと地元の専門家に紹介して、発達障害の原因っていまどういうのが世界で議論されているのか、みたいなことを聞いて欲しかったと思います。そうすれば答えてくれる専門家はけっこういると思うんですよね。正直言ってよく分からないような理屈も根拠も分からないような説を紹介するのかというのは非常に不思議に思います。

発達障害が増えているかどうかは議論のある所で、「自閉症スペクトラムの歴史」で紹介したような概念の拡大も影響しているかもしれませんし、本当に増えているかもしれません。それは日本だけの現象ではなく、アメリカやイギリス、韓国などの諸外国でも同様です。

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