合理的配慮再び

 2016年のTEACCHプログラム研究会の会報に掲載した「会長のつぶやき」から転載し,一部編集しました。ました。

2016年4月に障害者差別解消法が施行されたので、少なくとも国公立の学校では合理的配慮が法的義務になった。障害者権利条約で定義されている「合理的配慮」とは、障害のある人の平等権や基本的人権が阻害されている場合にそれを回復するための「変更」や「調整」のことで、一般的な意味での「気遣い」や「配慮」の意味ではない。原語はreasonable accommodationで、合理的配慮と訳するしかなかったのだろうと思うが、配慮というとなにか特別に「気を遣って」「気配りしてます」といった意味合いにとられかねない。そういった抽象的なものではなくて、accommodationとは具体的な変更や調整のことである。障害特性のために社会的障壁(バリア)がある場合に、そのバリアを最小限にするような変更や調整のことである。

  Bさんは中度の知的障害を伴う自閉症で特別支援学校に在籍している。偏食が強く、ほとんどの給食を食べることができない。給食の時間は食べるものがないためヒマをもてあまし、奇声などの問題行動が増加する。学校側に給食のメニューを本児の嗜好に合わせて欲しいと要望したが、諸事情でそれはできないと断られた。弁当の持参も学校側に断られた。その学校を見学したところ、アレルギーの子どもには別メニューが準備されていた。アレルギーは命に関わるので別メニューを準備するが、「単なる好き嫌い」には対応できないと言われた。

特別メニューは学校側にとって多少負担かもしれないが、アレルギーの子どもに特別メニューを準備できるのだから、その気になればできなくないだろうし、弁当にいたっては学校の負担は減るのではないだろうか? 学校によっては必要な調整をしているところもある。ダメだという理由は色々あるのだろうけど、給食が食べられないで空腹になったり、時間を持て余して問題行動が生じるのだから、合理的調整をすることで学校の負担も減るはずだ。それが、ダメな理由は「みんな一緒」という多様性を否定し、「一様性」を求める学校側の「信念」にあるように思う。

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